指針
外国籍信徒司牧の基本方針及び秘跡等に関する司牧指針
横浜司教区教区長司教ラファエル梅村昌弘
目 次
外国籍信徒司牧の基本方針
Ⅰ.外国籍信徒は横浜教区民である
Ⅱ.外国籍信徒コミュニティーの性格。
秘跡等に関する司牧指針
Ⅰ.秘跡
Ⅱ.葬儀
Ⅲ。信者籍
Ⅳ.献金
付則
外国籍信徒司牧の基本方針-2006年横浜教区司祭大会の提言を受けてー
この「基本方針」は、2006年8月28日~30目に開催された横浜教区司祭大会からの提言を受け、外国籍信徒司牧担当が作成した草案を、司教顧問会の意見を聴取したうえで、教区司教自らが修正、加筆し、横浜教区の方針として定めたものである。
Ⅰ 外国籍信徒は横浜教区民である
1.外国籍信徒は「お客さん」ではなく、わたしたちの兄弟姉妹である。邦人信徒と同じく教会のフル・メンバーである。
2.外国籍信徒の司牧に関して、属人小教区を作らないという従来の方針を堅持しつつ、邦人信徒との交わりをめざす司牧を行う。従って、各小教区をもって邦人信徒と外国籍信徒とのコムニオを図るものとする。「人種や民族、言葉や生活習慣の違いを乗り越えて、互いの交わりと一致を深め、共に手を携えて教会の使命を果たして行くことが大切です。」(司牧書簡『交わりとしての教会をめざして』7頁)
3.外国籍信徒の増加は、ひとつの「時のしるし」であって、現代に適した教会をつくるうえで大きな恵みである。
4.邦人信徒は外国籍信徒を積極的に受け入れるように努力する。また同様に外国籍信徒自身も小教区のメンバーとなるように努める。外国籍信徒を支えるために日本人の奉仕者の養成を図る。
Ⅱ 外国籍信徒コミュニティの性格
1.教会のコムニオは多様性の中の一致であって、決して画一をもっての一致ではない。異なる賜物を分かち合うことによってコムニオは成り立つ。従って、教会の真の交わりを実現するためには、外国籍信徒のアイデンティティーを尊重しなければならない。外国籍信徒が相当数に達した場合、主任司祭は、教区の外国籍信徒司牧担当モデラトールの意見を聴き、教区長と相談したうえで、小教区内に新たなコミュニティを設置することができる。「真の統合への道を示し、文化的に孤立した集団ができるのを避けると同時に、移住者を単純に地域の文化に同化させることを避けること。」(教皇庁移住・移動者司牧評議会指針『移住者へのキリストの愛』78項)
2.すべての外国籍信徒コミュニティは、ミサが行われる小教区に属しており、その最終的な責任者は主任司祭である。
3.小教区の外国籍信徒の司牧について、主任司祭は、各県の外国籍信徒司牧担当モデラトールと連帯を持つ。
4.各コミュニティは、主任司祭の責任の下で、固有の方法で典礼を行い、信仰養成、宣教活動等を行うことができる。しかし、同じ共同体に属している邦人信徒のコミュニティとのコムニオをめざし、外国籍信徒は日本語のミサにも定期的に参加するよう努力すべきである。
5.ミサの司式を小教区以外の司祭に依頼するのは、主任司祭、あるいは主任司祭の了解を得ている外国籍信徒司牧担当司祭である。信徒が直接に司祭に依頼することは認められない。
6.コミュニティの各リーダーの任命は、コミュニティの司牧担当者(司祭あるいはシスター)の推薦を受けて、主任司祭が行う。
7.各県の外国籍信徒司牧担当モデラトールは、県単位における外国籍信徒司牧のための聖体奉仕者の任命を教区司教に申請することができる。
8.ミサ献金は全額小教区の収人とする。また、月定献金、祭儀献金などについても邦人信徒の場合と同じ扱いとなるよう努力し、会計の統一を図る。各小教区はコミュニティを含めた予算を立てる。コミュニティ固有のイベントであっても、必要と認められる場合、小教区は財政的な支援をする。
9.横浜教区から給与を受けている司祭・修道者・信徒にミサ、あるいは養成コース等を依頼する場合、小教区からは交通費のみを支給する。横浜教区から給与を受けていない司祭・修道者・信徒には交通費とともに謝礼を小教区から出す。主日ミサの謝礼については教区の規定に従う。交通費については、小教区の枠を越えて(地区レペル、県レベルで)協力し合うことが望ましい。
10.外国籍信徒の子どもたちが自らの居場所を見出し、小教区に馴染めるよう、日本人信徒の子どもたちと一緒に日本語で信仰教育を受けられるようにする。
11. コミュニティの代表者を、他のメンバーと同じ資格を持つ、教会委員会のメンバーとする。
12.在日の外国籍信徒を、かれらの現状を考盧しながら、徐々に信者籍に入れるようにする。かれらの子どもたちの将来のために非常に大切なことである。
13.コミュニティは、日本人信徒の壮年会・婦人会・青年会等と同じように、親睦のために会費を集めることができる。また福祉のためにコミュニティのメンバーから献金を募ることができる。
2007年4月8日 復活の主日
横浜司教区教区長 司教 ラファエル梅村昌弘
秘跡等に関する司牧指針
この「秘跡等に関する司牧指針」は、1998年に東京教会管区会議で承認された「多国籍化する日本の教会の信徒司牧ガイドライン」を基に、主として横浜教区において外国籍信徒司牧に関わる司祭・修道者・信徒リーダーが使用するために、教区内の外国籍信徒司牧担当者が協議して作成した指針である。
I.秘跡
A.幼児洗礼
1.子どもの洗礼を望む両親のうち少なくとも一人はカトリックの信者でなければならない。それを証明するのは洗礼証明書である。両親の一人がカトリック信者でない場合は、その配偶者から洗礼の承諾を得なければならない。司牧者は、結婚を含め、両親の信仰を育てるために適切な指導を行う。
2.洗礼のため、代父/代母は、一人で十分である。しかし複数の代父/代母をたてることもできる。小教区の洗礼台帳に記載される代表の代父/代母については、洗礼証明書を求めなければならない。主任司祭は代父/代母になる人がカトリック教会において、しっかりした信仰生活を送っていることを確認する。
3.両親と代表の代父/代母は、洗礼の準備のために数回の講座を受ける必要がある。その中で、この秘跡の意義、保護者としての責務について学ぶことになる。両親のうち一人がキリスト者でない場合、キリスト者としての生き方について、敬意をもって伝える。なお、洗礼準備講座に参加できない場合、両親と代父/代母はコミュニティの担当司祭と相談する。
4.7歳以上の子どもは、洗礼、初聖体とゆるしの秘跡の準備を教会学校で行う。
5.洗礼式の日時については、主任司祭が適当な日時を選定して決める。
6.受洗する子どものカトリック両親と代表の代父/代母は、主日のミサに参加し、自らの信仰生活を深め、また小教区の共同体に馴染むように努める。
7.準備講座を担当する者は、必要書類を作成し、洗礼後、小教区の洗礼台帳に記人するため、直ちに小教区に提出する。
8.洗礼式自体に費用が掛かるものではないが、洗礼式の際に教会に謝礼として献金する。
B.成人洗礼
1.洗礼を希望する成人は、数か月教会の導きを受ける必要がある。求道期間前の期間を終えてから、入門式によって求道期間に入り、教会の教えを学びながら、共同体の中で、祈りの会や諸集会などに参加して、キリスト信者として生きるように努める。洗礼の準備を整えた後、入信志願式によって人信志願者として最後の準備をする。
2.入信の準備は、洗礼、堅信と聖体の準備である。
3.成人の代父/代母を少なくとも洗礼の数ケ月前に決めるべきである。
4.既婚者の場合、洗礼の前に結婚の正しさを確認する必要がある。
C.子どもの初聖体
1.初聖体の準備の責任は、誰よりもまず両親にある。
2.原則として小学校二年生において初聖体の準備を始める。
3.両親の一人が日本人である場合、または日本の小学校にその子どもが通う場合、小教区の日本語の教会学校で初聖体の準備をする。
4.初聖体のアフターケアは非常に大切である。子どもが引き続いて教会学校に通うことを心がけるべきである。両親は積極的に子どもの教理教育に参加することが求められる。子どもと共にミサにあずかり、小教区の行事に参加し、子どもにとってこれらのことが生活の大切な一部であることを実感できるようにする。
5.時折、教会学校の担当者が両親を集いに招き、その子どもの要理教育の進展について知らせることは、両親自身の養成にとっても必要なことである。
6.要理教育の中し込みに際し、カテキスタか教会学校のリーダーは、子どもの洗礼証明書の提出を求めなければならない。いろいろなキリスト教に似た新興宗教が急増しているため、子どもがカトリックでない「教会」で洗礼を受けている場合がある。
7.初聖体を受ける子どもは、ゆるしの秘跡を受ける準備もしなければならない。初聖体直前よりも初聖体の一か月前の方が望ましい。子どもたちがゆるしの秘跡を聖体拝領するための条件のように理解しないよう心がけるべきである。ゆるしの秘跡そのものがもつ固有の恵みを十分に昧わうことができるよう配盧する。
8.初めてのゆるしの秘跡と初聖体の日程は、主任司祭が決める。
D.堅信
1.堅信の秘跡は人信の秘跡の一つで、洗礼の完成とも言える。キリストの使命に参与することである。
2.横浜教区では、中学生以上の子どもが堅信を受けることが普通である。日本の教会では、堅信の秘跡は10歳から15歳までの者に授けるのを原則としている(日本における教会法施行細則第14項)。従って、小学校の高学年の子どもも堅信の準備を始めることができる。
3.主任司祭は堅信を受ける信者の洗礼証明書を取得しなければならない。
4.堅信を受ける者はその準備期間中、ミサにあずかり、共同体の諸活動に参加し、徐々に共同体の中での責務を身に着けてゆくようにする。準備期間は6か月ないし1年間とすべきである。
5.堅信のための代父/代母は、少なくとも1名である。代父/代母は、すでに堅信を受けた者である。
6.堅信の秘跡を受ける前に、ゆるしの秘跡を受けることになっている。 1日の黙想会と式典のリハーサルを実施することが望まれる。
7.堅信の際に、小教区として司式を務める司教の宣教活動のために献金する習慣がある。受堅者は教会に応分に献金する。
E.結婚
1.結婚を希望する者はその意向を挙式の3か月前から主任司祭またはコミュニティ担当司祭に知らせなければならない。
2.婚姻を希望する両当事者は、結婚講座を数回受講しなければならない。
3.結婚講座申込書と同時に次の書類を整えなければならない。
a.挙式前3か月以内に発行された結婚用洗礼証明書。
この証明書は当事者同士がカトリック信者の場合、
双方のものが必要である。この証明書がない場合、
教会で結婚式を行うことはできない。
b.免除可能の障害がある場合、その免除の書類。
c.国籍によっては、役所婚姻届(コピー)。
4.式典の日時はあらかじめ主任司祭またはコミュニティ担当司祭と合意しておく。
5.婚約者双方は、司式する司祭とともに、挙式を希望する教会を決め、その教会の主任司祭の許可を得る。
6.式場の装飾、式典における奏楽、撮影などは主任司祭と相談のうえ決める。
7.結婚の証人は、婚姻の誓いの証人として誓約書に署名する。
8.挙式する教会に対し、司式司祭、オルガン奏者、聖歌隊への謝礼、冷暖房などの費用として献金することになっている。教会によって金額は違う。
9.結婚式後、式が行われた小教区の結婚台帳に記人し、結婚当事者それぞれの受洗小教区の洗礼台帳にも記入するために、それぞれの教会に通知する。
10.挙式申込書などで再婚であると分かった場合、管轄権のある教会裁判所の手続きが必要となる。教区事務所に問い合わせなければならない。
F.ゆるしの秘跡
1.主任司祭またはコミュニティ担当司祭は外国籍信徒が自国語でゆるしの秘跡を受けることができるようにできる限り配盧しなければならない。
Ⅱ.葬儀
1.人はすべて死を迎えるとき不安を感じるが、外国籍信徒とその家族にとってその不安は極めて大きいものがある。予想しなかった経済的負担、慰め支える親族がいないこと、自国で葬られることができるか否かの心配などがあり、強い孤独感を覚える。その際、共同体の兄弟的な支えとケアが必要である。
2.死亡の知らせが届いたならば、祈りと慰めによる支えはもちろんであるが、葬儀社、役所、大使館への必要な手続きのために共同体の助けが必要な場合が多い。そこで、このような支援をすることのできる日本人信徒を各共同体に養成することが必要である。また通訳のできるコミュニティの信徒の確保も求められる。
3.海外からの移住者が亡くなった場合、特に気をつけなければならないのは日本で火葬にするか、遺体を本国に移送するかどうかである。亡くなった方の家族、親族などに日本の火葬の習慣を伝え、よく話し合ったうえで、どちらにするかを決める。遺族が遺体を本国に持ち帰ることを希望している場合、高額な搬送費がかかることを説明する。
Ⅲ.信者籍
1.信者の権利を守るために、また司祭が信者に対する責任を持つために、信者籍台帳を起すことが大切である。定住者あるいは永住者だけでなく、ミサやゆるしの秘跡をはじめその他の諸秘跡にあずかりたい子どもに信仰教育を授けてほしいと願う滞在者は、居住する地域の教会で籍を起すことが望ましい。イ言徒籍は司牧的配盧を円満かつ効果的にするために必要である。信者籍台帳の名前は母国語で記入し、フリガナをつける。
2.まだ教会に所属していない信者で、子どもの洗礼や初聖体などの秘跡を希望する場合は、よく説明した上で、両親と子どもと一緒に籍を起すことが望まれる。教勢調査の統計の数にも加える。
Ⅳ.献金
1.ミサ献金はどこの国でも行われている。自分の教会のためだけに使われるのではなく、教区、日本や世界の教会のさまざまな教会の活動にも使われている。
2.月定献金について、日本の教会の事情を説明し、外国籍信徒にも協力を呼びかける。
付則 一定期間後の見直し
この司牧指針に基づいて司牧を行い、しかるべき時期にその評価を行うものとする。必要があれば指針の見直しを行う。
2007年4月8日承認
横浜司教区教区長 司教 ラファエル梅村昌弘
指針
外国籍信徒司牧の基本方針 及び 秘跡等に関する司牧指針
2008年8月15目
カトリック横浜司教区
〒231-8652 横浜市中区山手町44