典礼コーナー

教区報に掲載されている典礼コーナーから転載しています。

交わりと奉仕に向けられている秘跡(叙階の秘跡・結婚の秘跡)
教区報84号より
 
 秘跡を概観するシリーズの三つ目の秘跡として、「叙階の秘跡」と「結婚の秘跡」をお届します。この二つの秘跡も、共同体の中で、御父のいつくしみの表われである「みことば」をいただき、みことばである御子と共に御父との出会いに向かう秘跡です。両秘跡とも、ことばの典礼祭儀に続いて行われるのはそのためです。
 入信の秘跡によって神の民の一員となったすべての「信者」は、キリストの祭司職に与り、福音を宣べ伝えるように呼ばれています。この祭司の民の中から、キリストの名において秘跡的に祭司としての役務を担う司教、司祭、そして共同体への奉仕のために助祭が立てられます。この司教、司祭、助祭の役務に任じる恵みを与えるのが叙階の秘跡です。
 司教、司祭、助祭の叙階式に共通しているのは、受階者の頭に司教が聖霊の働きを求めて按手し、聖別の祈りを唱える行為です。この役務はキリストから直接使徒たちに託されたものなので、とくに使徒の後継者である司教聖別の際は「最高の祭司職、聖なる役務の頂点」と呼ばれる叙階の秘跡の充満が授けられます。司教によって叙階され、司教から派遣される司祭は、司教の忠実かつ賢明な協力者として、預言者、祭司、王であるキリストの役務に参与します。この役務は、キリストが生きた愛を実践し、「仕えられるためではなく、仕えるために来た」(マタイ20・28)キリストに倣って、コムニオ(交わりの一致)を大切にしながら、民を愛し、民に仕えるキリストの使命を継続する役務なのです。
 この重要な任務を帯びた司祭職への召命は、入信の秘跡を受けて神の民となった信者の家庭の中から生まれます。キリスト者としてのコムニオと子どもの出産と養育を目指して、家族共同体を築き発展させるための恵みを与えるのが、結婚の秘跡です。
 この二つの秘跡の関わりを大切に考える教皇フランシスコは、『家族』という講話集の中で、「教会とは霊的家族であり、家庭とは小さな教会である」と述べています。神のひとり子イエスは小さな村の家庭に生まれ、そこで御父からの使命を確かめながら「知恵が増し、背丈も伸び、神と人とに愛され」(ルカ2・52)る人へと成長し、公生活に向かう準備をなさいました。
 結婚や家庭に関わる価値観が多様化している現代社会にあってわたしたちは、次世代を担う子どもたちの出産と養育という重大な使命が神から託されていることを大切にしたいと思います。子どもたちが心身ともに安らぐ場である家庭を築くために必要な「結婚」の制度を大事にしていく必要があります。
 カトリック教会は、家庭の礎を築く「結婚の秘跡」の大切さを知っているがゆえに、その準備となる「結婚講座」や手続きを重んじています。秘跡にまで高められている結婚の意義を今一度確認し、結婚生活を全うするために必要な恵みを受ける機会として活用していただけることを望みます。